2014年5月20日(火)14:46
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【バンコク=石崎伸生】昨年から政治危機が続くタイの国軍は20日午前3時(日本時間午前5時)、全土に戒厳令を発令した。
事実上の軍トップであるプラユット陸軍司令官は6時過ぎからテレビ演説を行い、「軍はできるだけ早く平和を回復したいと望んでいる」と述べ、反政府デモ隊や政府支持派・反独裁民主戦線(赤シャツ隊)に活動の即時中止を促した。国民に向けては「パニックにならず、通常の生活を送ってほしい」と呼びかけた。
司令官の演説に先立ち、軍スポークスマンは、戒厳令は秩序の回復のための措置であり、憲法を停止して実権を掌握するクーデターとは異なると強調した。
タイではタクシン元首相派の政府・与党に反対する勢力のデモが昨年11月から続き、最近もデモ会場を狙った爆発や銃撃事件が発生し、これまでにデモ関連の死者は28人に達している。プラユット司令官は15日の声明で「治安回復に必要なら武力も使う」と表明。クーデターから戒厳令に乗り出すのではとの臆測も高まっていた。
戒厳令布告により、これまでは主に警察が行ってきた治安維持活動は軍が全権を担う。軍は主要テレビ局に入って放送内容をモニターしているほか、バンコク市街では軍による検問もみられる。
反政府デモ隊は戒厳令発令を受け、20日に予定していたデモ行進を中止すると発表した。一方、ロイター通信によると、反独裁民主戦線の幹部は、バンコク郊外で10日から続けている大規模集会を続ける意向を示した。幹部は「選挙を行ったうえで、新しい首相が就任するという民主主義の原則に立ち戻ることが出来るまで活動を続ける」と述べた。
一方、選挙管理内閣を率いるニワットタムロン首相代行の側近は、軍から戒厳令発令について事前の相談はなかったと説明。そのうえで、「選挙管理内閣は存続している。治安を軍が担当することを除けば通常と変わりない」と述べ、懸案である総選挙の早期実施に努める立場を強調した。
タクシン元首相の妹インラック前首相は5月7日、憲法裁判所の違憲判決を受けて失職した。その後もタクシン派の選挙管理内閣は続いており、ステープ元副首相率いる反政府派は現内閣の一掃を目指して、19日から「最後の戦い」と称する運動に乗り出していた。
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